猫のストラバイト対応療法食、
膀胱炎やストラバイトに
なってしまった猫には
効果的で心強いキャットフードですよね。
しかし、猫にストラバイト対応療法食を
長く与え続けることは
すごく危険なことでもあるんです!
この記事では、
猫にストラバイト対応療法食を
長く与え続けることの
危険について詳しく説明しています。
目次
意外と多い!猫にストラバイト対応療法食をずっと与え続けている飼い主さん
ストラバイトが治っているのに
予防のために、と
療法食を与え続けるのは危険です。
「予防のためにずっと与えています」
「再発したのでずっと与えています」
「病院で一生療法食、と言われました」
こんな人はいませんか?
猫にストラバイト対応療法食を
日常の食事としてずっと与えている人、
意外に多いみたいなんですよね。
そういう話を聞くたびに、管理人もみじは
「やめたほうがいいよ」と切に思います。
ストラバイト対応療法食を食べ続けていると、別の種類の結石ができてしまう可能性が高くなる!
猫のオシッコは、弱酸性くらいが理想です。
それに対して、
ストラバイトや膀胱炎の多くは、
膀胱内の細菌繁殖などにより
尿phがアルカリ性になってしまうことで起こります。
ストラバイト対応の療法食は
アルカリに傾いてしまった尿phを
酸性に傾ける効果が高いのです。
アルカリ尿状態だと
ストラバイトが生成されやすくなり
細菌も繁殖しやすくなりますが、
酸性尿ならストラバイトはできなくなりますし
できたストラバイトも溶けてしまう。
細菌も繁殖しなくなります。
だから尿phを酸性に傾けることはとても大切なんですが、問題は長期間にわたり過度に傾けすぎてしまうことです。
長い間、尿phが過度に酸性になる状態が続くことで、ストラバイトよりもっとやっかいな別の種類の結石ができてしまうリスクが高まってしまうのです!
ちょっとおさらい、猫の尿phを酸性にしてくれる仕組みとは?
ストラバイト対応療法食には
【含硫アミノ酸】というタンパク質の成分がとても豊富に含まれています。
【含硫アミノ酸】って?
わからないな
そうですよね、たしかに普段あまり耳にしない言葉です。
【含硫アミノ酸】とは
その構造に硫黄原子を有するアミノ酸。代表的なものにメチオニン、システイン、ホモシステインなどがある。
(ウィキペディアより)
要はタンパク質を構成するアミノ酸の一種なんですが、ウィキペディアの引用にある「メチオニン」、キャットフードの場合、このメチオニンが含硫アミノ酸の代表格です。
今、あなたが愛猫に与えているフード、
原材料のところをよーく見てみてください。
真ん中あたりか下のほうに、
「メチオニン」とか「DLメチオニン」って
ありませんか?これが含硫アミノ酸です。
この含硫アミノ酸により、
尿phは酸性に傾くのですが、
口から摂取したそのままの状態で、
というわけではありません。
ちょっと複雑な過程を得ているのですが、
簡単に説明してみますね。
含硫アミノ酸は体内で分解される過程で水素イオンをたくさん放出します。
水素イオンが溶けている水溶液は酸性になりますが、体内では血液中に溶け出して血液を酸性に傾けようとするんです。
しかし、血液は厳密に弱アルカリ性であることが必須。
酸性になったりしたら命にかかわります。
そこで体は勝手に
血液phを正しい状態に調整します。
その時に使用されるのが重炭酸イオン。
アルカリ物質である重炭酸イオンと
水素イオンをくっつけて中和して、
血液のphを適切な値になるよう
調節しているのです。
化学式にすると、
H+(水素イオン) + HCO3-(重炭酸イオン) →H2CO3(炭酸)、です。
体のつぶやきをイメージすると…
「水素イオンが増えすぎて
血液が酸性になっちゃうよ!
だれか重炭酸イオン持ってきてくれー、
水素イオンをくっつけて調節するぞー」
って感じでしょうか?w
そしてH2CO3(炭酸)は、腎臓でもう一度
水素イオンと重炭酸イオンに分かれ、
重炭酸イオンは血管に戻され、
水素イオンはオシッコと一緒にポイッ。
「水素イオンはオシッコと一緒にポイッ」
これがこの話のキモです。
水素イオンを含む水溶液が
酸性になることはすでに書きましたが、
オシッコも同じ、水素イオンが多く含まれていれば酸性になるんです!
長々と書いてきましたが、含硫アミノ酸を多く摂取すればオシッコにポイされる水素イオンの量も増えてオシッコが酸性になってくれるんです。
なぜできる?ストラバイトより怖いカルシウム由来の結石!
含硫アミノ酸を豊富に含む
療法食を食べて尿phは酸性に。
これで猫のストラバイトや膀胱炎も解決!
めでたしめでたし!
しかし、最初に書いたような状況だとどうなるのでしょうか?
「予防のためにずっと与えています」
「再発したのでずっと与えています」
「病院で一生療法食、と言われました」
尿phを酸性にすることにこだわり、
ずっと療法食を与え続ける。
ストラバイトがあってもなくても、
膀胱炎なんかとっくに治っていても、
尿phの状態を知らなくてもとにかく療法食、
だって尿phが酸性じゃなくちゃ困るから。
しかし、必要以上に
尿phを酸性にしようとして
含硫アミノ酸を摂取しすぎると、
どういうことが起こるのか?
体のつぶやきでイメージしてみましょうか。
「水素イオンが増えすぎて血液が酸性になっちゃうよ!
だれか重炭酸イオン持ってきてくれー、
水素イオンをくっつけて調節するぞー」
ここまでは
上に書いたイメージと同じですが、
この時水素イオンが多すぎて重炭酸イオンが足りなくなると…
「重炭酸イオンが足りない?困ったなー、
じゃあ骨からカルシウム持ってきてくれ!」
となってしまうのです。
過度に尿phの酸性化を図ろうとすると、
重炭酸イオンだけじゃ足りなくなる。
その時何を使うかと言うと、
重炭酸イオンと同じアルカリ物質である
カルシウムイオンを使うんです。
で、このカルシウム、
本来は腎臓で再吸収されて
体に戻るものなのですが、
含硫アミノ酸の摂取量が多いと、
再吸収能力が下がって
オシッコの中に残りやすくなるんです。
その結果、
腎臓や膀胱でカルシウム由来の結石が
できてしまうリスクが高まるのです。
やっかいなことに、カルシウムの結石は
ストラバイトのように
一定条件で溶けることはありません。
治療方法は手術などで
物理的に取り出すことだけです。
ストラバイトよりすごく
やっかいなものなんですよ。
- 療法食を長く食べ続けると尿PHが酸性になりすぎることもある
- 尿PHが酸性になりすぎると、カルシウムの結石ができてしまうことも!
他にもある、療法食でカルシウム結石ができてしまう原因とは?
ストラバイト対応の療法食を
長く与え続けることで
過度に尿phの酸性化が続いてしまい、
カルシウム由来の結石ができやすくなる。
しかし、療法食の問題は
尿phの過度な酸性化だけではありません。
以下は、日本獣医麻酔外科学雑誌の
「猫の尿管結石症」という論文からの抜粋です。
書いたのは、北里大学獣医学科の准教授、
岩井聡美氏。
web上でこの方の書いたものを
いくつか読ませていただきましたが
猫の尿路疾患に関する外科的な治療、
猫の腎不全に関する論文などがあり、
私もおおいに勉強させていただきました。
近年では若齢でありながら、腎盂や尿管にシュウ酸カルシウム結石が発生する症例が増えている。この一つの理由として、ストルバイト用のフードとして市販されている食餌の過剰な普及が関連しているともいわれている
日本獣医麻酔外科学雑誌「猫の尿管結石症」より抜粋
これは、もともと老齢の猫は
腎臓でのカルシウム吸収力が弱まり
シュウ酸カルシウム結石ができやすい、
というのを受けての文章です。
老猫はまだしも、若い猫にも
シュウ酸カルシウム結石ができやすくなっている。
その理由は?というところで
ストルバイト用フードの作用として、
日本獣医麻酔外科学雑誌「猫の尿管結石症」より抜粋
1、尿 pHを酸性化させること
2、シュウ酸カルシウム阻害因子である尿中のマグネシウム濃度が減少すること
3、塩化ナトリウムの添加により尿中カルシウム排泄量を増加させて高カルシウム尿症を招来すること
と、ストラバイトの療法食により
シュウ酸カルシウム結石ができやすくなる理由を3つ挙げていらっしゃいました。
1、は管理人もみじが
これまで書いてきたことですが
2と3、これも気になりますよね。
どういうことなのか、
調べてみましたよ!
マグネシウムが不足するとシュウ酸カルシウム結石ができやすくなる!
まずは
2、シュウ酸カルシウム阻害因子である尿中のマグネシウム濃度が減少すること
についてです。
マグネシウムには、
シュウ酸と結合する働きがあるそうです。
マグネシウムは腸管内で
シュウ酸と結合して、
腸管からのシュウ酸の吸収を阻害してくれる
働きがあります。
また、オシッコの中にあっても
カルシウムの代わりにシュウ酸と結合して
シュウ酸マグネシウムとなり、
シュウ酸カルシウムになってしまうことを
防いでくれる。
(シュウ酸マグネシウムは水に溶ける性質があるのでオシッコの中にあっても安全)
つまり、マグネシウムがあることで
シュウ酸とカルシウムの結合が
防げている、ということなんです。
でも、ストラバイトの療法食は
「ストラバイトの原因はマグネシウム!」
という考え方のもと、
マグネシウムをかなり制限しているものがほとんど。
このことが、シュウ酸カルシウム結石を
できやすくしてしまう原因のひとつである、
ということなんですね。
ナトリウムが多いとオシッコにカルシウムが増える!
次は
3、塩化ナトリウムの添加により尿中カルシウム排泄量を増加させて高カルシウム尿症を招来すること
について。
ナトリウムの摂取量が多いと
オシッコの中にカルシウムが増えて
高カルシウム尿症になることもあるそうです。
腎臓に入った血液は
オシッコのもとになる
「原尿」というものになります。
原尿からは体に有用な成分が
再吸収という形で血液に戻されますが
カルシウムも再吸収される成分のひとつです。
でも、その時にナトリウムの摂取量が多いと
カルシウムの再吸収が十分にできず、
オシッコの中にカルシウムが増えてしまう
こともあるそうです。
多すぎるナトリウムのせいで
オシッコの中にカルシウムが増える。
そしてシュウ酸と結びついて
シュウ酸カルシウム結石になることもある、
ということですね。
一部の療法食の中には
水分摂取を増やすために
ナトリウムを多く配合しているものもあります。
そのせいで、シュウ酸カルシウム結石を
できやすくしてしまうことがある、
ということなんですね。
ストラバイト対応療法食を食べ続けていると、腎臓に負担がかかることも?
どのメーカーさんのストラバイト対応の療法食でも、タンパク質源として、肉や魚より穀物からできるタンパク質をたくさん使ってます。
超高消化性小麦タンパクとか、コーングルテンとか、これらが穀物から作られたタンパク質です。
でもね、タンパク質の品質という点からみると、肉や魚は優れていて、穀物からできるタンパク質は明らかに劣ってます。
これは「アミノ酸スコア」という
数値で表されるんですが、
肉や魚はほとんどが100点満点なのに対して、
小麦やトウモロコシは30~40くらい。
これの何がいけないかというと、タンパク質の体の中での利用効率の問題なんです。
点数の高い肉や魚のタンパク質は
無駄が少ない。
点数の低い小麦などのタンパク質は
無駄が多い、ってことです。
無駄になって使い道のないタンパク質も
体内ではきっちり代謝され、
腎臓でろ過されて尿と一緒に排泄されます。
つまり、役に立ってないのに腎臓の仕事だけ増やしてる、ってこと。
ストラバイトや膀胱炎の
治療中だけならともかく、
アミノ酸スコアの低いタンパク質を
ずっと?一生?続けて食べていたら、
腎臓への負担が大きくなることは
確実だと思いませんか?
猫のストラバイト対応療養食、長期連用はやめよう!
猫のストラバイト対応療法食は
あくまで「治療」のためのフードです。
予防のために長期連用するのはやめよう!
というのが管理人もみじが
声を大にして言いたいこと。
療法食の中には、「維持食」とか
「シュウ酸カルシウム結石にも対応」とか
書いてあるものもあり、
一見長く食べさせても平気そうですが、
管理人もみじはそうは思いません。
同じフードを与えても、
体にどれくらいの変化があるかは
猫それぞれ、個体差ってものがあるんです。
全ての猫が「適切に」維持できたり
カルシウム由来の結石ができない
フードなんてあるわけがない。
維持するだけなら、
消化に負担でアミノ酸スコアの低い
植物性タンパク質たっぷりのフードよりも
動物性タンパク質が多めのフードを
与えたほうが良いですし、
カルシウム由来の結石だって
消化吸収力や腎機能、
他のミネラルの摂取具合によって
できてしまうリスクには個体差があるはず。
そして、穀物からできた
アミノ酸スコアの低いタンパク質のせいで、
腎臓にも無駄な負担をかける。
大切なことだからもう一回言います。
猫のストラバイト対応療法食、
長期連用はやめよう!
この記事では、ストラバイト対応療法食の正しい使い方を紹介しています。
あわせて読んでいただけるとうれしいです。
コメント
こんにちは!
知恵袋を見てこちらのブログに辿り着きました!
猫のご飯について、今後何をやればよいかわからず悩み中です。
医者に療法食をずっと続けて〜と記事と同じ事を言われたのですが、まだ2歳ですし不安があります。療法食や維持食など色々調べてはいますが、たくさんありすぎて‥
こちらでアドバイスいただく事は可能でしょうか?
宜しくお願い致します