今、ヒトの世界では短鎖脂肪酸で健康を、ダイエットを、と
話題になっているようですが、この短鎖脂肪酸、
猫にもヒト同様の効果があるようです。
この記事では、短鎖脂肪酸のダイエット、肥満防止効果について
分かりやすく説明しています。
目次
短鎖脂肪酸とは?
短鎖脂肪酸とはいったいどういうものなのでしょうか?
脂肪酸とは、油脂を構成する成分のひとつで、数個から数十個の炭素が鎖のように繋がった構造をしています。そのうち炭素の数が6個以下のものが短鎖脂肪酸と呼ばれ、酢酸、プロピオン酸、酪酸などが含まれます。
(ヤクルト中央研究所HPより引用)
要するに脂肪酸の一種、ということですよね。
短鎖脂肪酸は腸で作られる!
通常、脂肪酸は肉や魚の脂肪、サラダオイルやオリーブオイルなど、
脂肪や油脂に含まれていて、それらを食べることで体に取り込んでいます。
よく知られているものだと、オレイン酸とかαリノレン酸とか。
でも短鎖脂肪酸はちょっと違う。
主に腸内で善玉菌が作り出して腸管を通じて体に取り込まれます。
食べ物から摂取することはできないの?
ハイ、残念ながらほぼ無理なんです。
主な短鎖脂肪酸には、酪酸、酢酸、プロピオン酸などがありますが、
酪酸はバター、酢酸はお酢、プロピオン酸はブルーチーズ、と
含まれている食品はあるものの、種類がとても少なく必要量を摂取するのは難しいんです。
また、短鎖脂肪酸は大腸での働きにもさまざまな効果がありますが、
食べ物からの摂取だと、胃や小腸で消化吸収されてしまうので
大腸まで届かず、十分な効果を発揮することができません。
だから、腸内で作ることがとても大切になってくるんです。
短鎖脂肪酸のダイエット効果とは?
短鎖脂肪酸には、大きく分けて2つのダイエット、肥満防止効果があります。
基礎代謝を上げる効果
基礎代謝とは、
心身ともに安静な状態の時に生命維持のために消費される必要最小限のエネルギー代謝量。
(厚生労働省作成のサイト、e-ヘルスネットより引用)
カンタンに言うと、なにもしなくても消費されるエネルギー量、ってことです。
ダイエットには、この基礎代謝を上げることがとても大切なんですが、
腸内で作られる短鎖脂肪酸には基礎代謝を上げる効果があるんです。
どういうことかと言うと…
ヒトや猫の体には「受容体」というものがあって
物質や刺激を受け取り、それに見合った反応を起こすのですが
短鎖脂肪酸の場合、GPR41という受容体が短鎖脂肪酸を受け取ると
交感神経を刺激して、体温を高めたり酸素の消費量を増やすことで
基礎代謝が上がる、という仕組みになってます。
脂肪の蓄積を抑える効果
短鎖脂肪酸には、脂肪の蓄積を抑える効果もあります。
上で書いた受容体の話と同じ仕組みで、
GPR43という種類の受容体が短鎖脂肪酸を受け取ると
エネルギーを脂肪として蓄積するのを抑えてくれるようになります。
マウスを使った動物実験では以下のような結果が出たようです。
この Gpr43遺伝子欠損マウスは体重、脂肪重量の増加という肥満の傾向を示した。
GPR43 を脂肪組織特異的に過剰発現させた aP2-Gpr43 トランスジェニックマウスを
作出し、その結果、この遺伝子改変マウスは全身性 Gpr43 遺伝子欠損マウスと逆の表
現型である痩せの傾向を示した。
(脂質栄養学会誌に掲載の論文、「食事由来腸内細菌代謝産物、短鎖脂肪酸と宿主代謝制御」
より引用しました。)
わかりやすく言うと、
GPR43を持たないマウスは太ったけど、GPR43をたくさん持ったマウスは痩せました、
ってことですね。
さらに、この実験では腸内細菌を死滅させたマウスでも同様の実験を行いましたが、
肥満したり痩せたりと言った変化は起きなかったそうです。
このことで、GPR41、GPR43といった受容体は、腸内で善玉菌によって作られる
短鎖脂肪酸を受け取ることで反応を起こしていることも示されました。
猫は短鎖脂肪酸を作るのが苦手な生き物?
基礎代謝を上げて脂肪の蓄積を抑える。
猫のダイエットに大きな効果がありそうな機能を発揮できる短鎖脂肪酸ですが、
どうしたら短鎖脂肪酸を十分に作れるようになるでしょうか?
上のほうで書きましたが、短鎖脂肪酸は主に大腸で作られます。
善玉菌がエサを食べることで作られるのですが、大切なのがその「エサ」。
善玉菌のエサになるのは主に食物繊維ですが、
特にエサとして優れているのが水溶性食物繊維です。
キャットフードで水溶性食物繊維が多い食材は?
キャットフードによく使われる食材で、水溶性食物繊維が多いものを集めてみました。
大麦 | 6.7 |
小麦 | 5.1 |
オート麦 | 3.2 |
大豆 | 6.1 |
インゲン豆 | 4.3 |
ひよこ豆 | 1.2 |
ジャガイモ | 2.5 |
サツマイモ | 2.4 |
ニンジン | 2.0 |
(文部科学省作成のサイト、「食品成分データベース」より調べて作成しました)
単位はグラム、100gあたり何g含まれているかを示しています。
これで見ると、麦類は総じて水溶性食物繊維が豊富なんですね。
米類は、玄米含め麦類よりだいぶ少なかったです。
豆類もなかなか豊富、野菜や果物はあまり多くなかったです。
猫にとって理想的な食事は食物繊維が不足しやすい
猫は肉食獣。
タンパク質と脂肪が多めで糖質はちょっぴり、そんな食事が理想です。
しかし、
猫の腸内環境が悪化しやすいたった1つの理由とは?で書きましたが、
肉食獣にふさわしい食事は食物繊維が不足しやすく、腸内環境が悪化しやすいです。
いくら麦や豆に水溶性食物繊維が豊富だからといって
そればかり食べていたら、麦や豆に多く含まれる糖質(炭水化物)が過剰になってしまい、
タンパク質や脂肪など、猫にとって必要な栄養が不足してしまいます。
つまり、猫にとって理想的な食事では、
短鎖脂肪酸を十分に作るのは難しいんです。
猫の食事に水溶性食物繊維をちょい足し!これで短鎖脂肪酸を作ろう
腸内で短鎖脂肪酸を作るために必要な水溶性食物繊維を十分取ろうと思っても、
肉食獣の猫には麦や豆のような糖質が多い食品をたくさん与えることができません。
じゃあどうしたらいいのかな?
うむ、水溶性食物繊維だけを我々のゴハンにちょい足ししてくれたまえ。
ハイ、猫せんせいに先に言われてしまいましたが、その通り!
水溶性食物繊維だけを愛猫のゴハンにちょい足ししてあげましょう。
これなら猫の理想の食事、「糖質ちょっぴり」を維持したまま、
水溶性食物繊維だけをしっかり摂取することができますよ。
水溶性食物繊維、どんなものがある?
水溶性食物繊維は、サプリメントや食品としていろいろ販売されています。
ヒト用のものもあれば、ペット用のものもありますが、
管理人もみじのおススメを紹介しちゃいますね。
イヌリン
イヌリンは、チコリなどの植物に含まれる水溶性食物繊維です。
最近はキャットフードやペット用サプリに使用されることも増えてきましたが、
ヒト用のイヌリンだけを抽出した食品もありますよ。
レジスタントスターチ
レジスタントスターチは、水溶性食物繊維と不溶性食物繊維の
両方の機能をもつ優れものです。
レジスタントスターチも、ヒト用の食品として販売されてます。
ヒト用の水溶性食物繊維を猫に与えるときのちょっとした注意点
イヌリンにしてもレジスタントスターチにしても、
薬ではなく食品、食べ物なので、ヒト用のものを与えてもまったく問題ないです。
管理人もみじは、現在イヌリンを猫に与えていますが、
(ヒト用に作られたもの、管理人もみじ自身も愛用中です)
健康上の問題はぜんぜんありません。
でもヒト用のものを猫に与えるときは、ちょっとした注意が必要なことも。
それはおもに量の問題です。
体の大きさが違うヒトと猫、猫には少なめに、というのは
感覚的にほとんどの方が理解しているとは思いますが、
最初に与える時は極力少なめがおススメです。
目安になるのは、ウンチの柔らかさと回数でしょうか。
水溶性食物繊維はウンチを柔らかくする効果があるので
与えすぎると下痢気味になる猫もいるかもしれません。
したばかりのウンチが、コロコロ、カチカチではなく、にょろっと長さを保ち、
割りばしの先などで押してみて、あまり抵抗なくへこむくらいの柔らかさ、
これくらいを目指して量を調整してみてくださいね。
また、水溶性食物繊維は腸の中をゆっくり移動する性質があるので
ウンチが腸にとどまる時間が長くなり、結果としてウンチの回数が減ることもあります。
多少なら気にすることはないですが、「便秘?」と思われるほどでしたら
量を減らしてみるなどの調整も必要になるでしょう。
最初は、一日あたり、ヒトの指でひとつまみ、耳かき山盛り一杯、
これくらいの量から始めてみるのがおススメですよ。
猫用の善玉菌サプリとの合わせ技でさらに効果アップも!
短鎖脂肪酸を作るには、善玉菌のエサとなる水溶性食物繊維が必要。
この記事ではそのために、猫に水溶性食物繊維の摂取をおススメしてきましたが、
エサを食べる善玉菌も一緒に摂取できれば、さらなる効果アップも期待できます。
乳酸菌、ビフィズス菌、フェカリス菌など
猫用の善玉菌を配合したサプリメントも数多く販売されていますので、
善玉菌サプリと水溶性食物繊維、一緒に与えるのもとてもいいと思います。
管理人もみじも善玉菌サプリはかれこれ11年以上、継続して与えていますが
ダイエット、肥満防止だけではなく、
免疫力アップや美しい毛並みを保つ効果が高いことを実感しています。
まとめ
ヒトや動物の腸内環境に関して年々研究が進み、
そのなかで、短鎖脂肪酸のもつ素晴らしい働きも徐々に解明されつつあります。
不妊手術の影響などで、肥満しやすくなっている現代の飼い猫たち、
食事やカロリーの制限で、愛猫につらいガマンをさせるのではなく、
体の中からのダイエット、肥満防止対策として、
腸内で短鎖脂肪酸をたっぷり作れる食事を目指してみませんか?
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