猫と糖新生~タンパク質をたくさん必要とする理由がここにあった!

猫と糖新生 猫の食事、栄養

猫はヒトや犬と比べるとタンパク質を多く必要とする生き物ですが、
なぜ猫だけがタンパク質を多く必要とするのか、考えてみたことがありますか?

猫は肉食獣だから?

ハイ、その通りなんですが、ではなぜ肉食獣はタンパク質をたくさん必要とするのでしょうか?

このことがしっかり理解できると、猫の食事に必要なもの、
腎不全の猫に、肥満の猫に、そしてなによりあなたの愛猫に
どんな食事がよいのか、自然とわかるようになりますよ。

そのキーワードになる言葉が「糖新生」です。

「糖新生」とは?

さて、糖新生とはいったいどういうものなのでしょうか?
ウィキペディアでは

糖新生(とうしんせい、gluconeogenesis)とは、飢餓状態に陥った動物が、グルカゴンの分泌をシグナルとして、ピルビン酸、乳酸、糖原性アミノ酸、プロピオン酸、グリセロールなどの糖質以外の物質から、グルコースを生産する手段・経路である。

このように記載されています。
要約すると、糖質以外のものからブドウ糖を作る、ということです。
最後のほうに「グルコースを生産する」ってありますが、
グルコースとはブドウ糖のことです。

ブドウ糖は、車で言えばガソリンのようなもの、
生命活動のエネルギー源として欠かすことのできない大切なものです。
特に脳ではブドウ糖以外のものをエネルギーにすることは原則できません。

ブドウ糖はデンプン(炭水化物)から作られますが、
体内にはたくさん貯蔵できません。
寝ている間や空腹時に貯蔵分を使い切りそうになってしまうこともあります。

ここで「糖新生」の出番となるわけです。
ブドウ糖を作りたいけどデンプン質がない!貯めた分もなくなりそう!
こんな時に糖新生でデンプン(糖質)以外のものからブドウ糖を作って
エネルギーを確保しているんですね~。

また、Wikipediaからの引用分だと、色々なものが糖新生の材料になるような
書き方をしていますが、実際にはタンパク質が糖新生の材料として
約90%を占めているんです。

猫は糖新生でエネルギーを得ている!だって肉食獣だから

猫は肉食獣、本来生き物を捕らえて食べる生き物です。
こういう食生活だと、口から入る栄養のほとんどがタンパク質と脂肪、
炭水化物(糖質)、つまりデンプンなんてほとんど食べません。

だから肉食獣のエネルギーは
その多くを糖新生によって作り出しているのです。

猫はタンパク質がたくさん必要!だって糖新生しちゃうから

猫はヒトや犬に比べてタンパク質をたくさん必要とする生き物。
例えば雑食動物の犬と比べると、1.5倍~2倍くらいのタンパク質が必要です。

猫はどうしてこんなにたくさんのタンパク質が必要なのでしょうか?
それは、肉食獣が長い間繰り返してきた食生活に理由があるのです。

すでに述べたように、肉食獣の主食は捕らえた獲物。
口に入る栄養素のほとんどがタンパク質と脂肪です。

だから糖新生でタンパク質からブドウ糖を作り出し、エネルギーにすることがとても大切で、
肉食獣の体は糖新生を活発に行うようにできています。

人に飼われる歴史の長い猫も例外ではありません。
狩りで獲物を捕らえて生きる必要がなくなっても、
炭水化物が多く含まれているキャットフードが主食になっても、
活発な糖新生を行うように体ができているのです。

本当なら、炭水化物を食べていればそんなに糖新生を行う必要はないのですが、
肉食獣として生きた歴史が体にきざみこまれていて、
たとえ炭水化物を食べていても、糖新生をしてしまうのです。

猫の場合、どんな食事をしても一定量の糖新生が起こってしまいます。
例えば、腎不全だからタンパク質を少なくした食事にしても
代わりに脂肪や炭水化物をたくさん食べたとしても、
やはり一定量のタンパク質は糖新生で消費されてしまうんです。

つまり、猫が犬に比べてタンパク質が沢山必要なのは、
「(やらなくていい時でも)糖新生しちゃうから」なのです。
どんな時でも、どんな食事でも糖新生が起きてしまうのが猫の特性なんですね。

糖新生するだけのタンパク質がなかったら、猫の体は何をする?

猫の体ではどんな時でも、どんな食事でも、一定量の糖新生は行われ、
タンパク質は消費されます。
では、もしその時に、糖新生に使われるタンパク質が不足していたら?

猫せんせい
猫せんせい

うむ、筋肉を使って糖新生するんですよ。

猫せんせいに先に言われてしまいましたが、その通り。
筋肉からタンパク質を取り出して糖新生してしまいます。
なにがなんでも糖新生しないと気がすまないのが猫の体なんです。

これはヒトでも起こりうることで、代表的な例が糖質制限ダイエットの失敗です。
糖質を制限しているときに、タンパク質や脂肪など他のエネルギー源が足りないと
筋肉からタンパク質を取り出してエネルギーに変えてしまう、
結果として筋肉が減り、痩せたというよりは筋肉量の少ない貧弱な体になり、
筋肉が減ったことで基礎代謝が下がってリバウンドしやすくなる、という構造です。

猫の場合、常に一定量の糖新生があるから
糖新生によって筋肉量が減ってしまうリスクはヒトより高いと言えるでしょう。

「糖新生」をベースに猫の食事を考えてみる

ヒトや犬とは違う、猫独特の糖新生特性が理解できると
猫の食事に必要なものがなんとなくわかってくるんじゃないでしょうか?

タンパク質がたくさん必要ってことだよね?

ハイ、おっしゃる通り、漫然と「肉食獣だから」ではなく、
猫独特の糖新生のしくみのせいで、ヒトや犬よりタンパク質の消費量が高いことを
理解できると日々の食事を考える際の大きなヒントになってくれますよ。

健康な猫の場合

最低でも筋肉量が減らない程度のタンパク質が必要になります。

糖新生により、どれくらいのタンパク質が使われるかは
実験データ等がみつからなかったのでわかりませんし、
個体差もあるから、具体的な数値はわかりません。

目安は愛猫の体つき。
特に足の筋肉のつき具合で判断してあげてください。
猫はヒトのようにマッチョな太い筋肉はつきませんが
高いところに昇る、ジャンプする、その直前にたわめられた後ろ足に
しなやかな筋肉の動きが見受けられるでしょうか?
そのあたりが判断の目安になると思います。

肥満の猫の場合

何を食べても一定量の糖新生が起こってしまう猫の場合、
エネルギーとして利用されずに、余って脂肪になりやすいのは糖質(炭水化物)です。

糖質より脂質のほうが脂肪になりやすいような気がするけど…?

いえいえ、猫は元来脂質代謝は活発なのでエネルギーとして利用されやすいんです。
糖質のほうが単に余って脂肪になるだけではなく、
肥満を誘発する要素もあるから注意が必要なんですよ。
糖質が猫の肥満を招く原因になりやすいことは

キャットフードの糖質~肥満や糖尿病の原因に?!ドライフードだけ、にご用心
肉食獣の猫にとって、多すぎる糖質は体に良くないことも?肥満や糖尿病の原因になりやすいことも?この記事では、糖質をたくさん摂取してしまうことが危険なことをわかりやすく説明しています。

こちらの記事で詳しく書いてるので読んでみてくださいね。

肥満気味の猫の場合、筋肉をしっかりつけて基礎代謝を上げるためにも、
タンパク質をしっかり食べることが、
健康な猫よりも、さらに重要になってくるでしょう。

肥満の猫の食事には、多めのタンパク質と少ない糖質(炭水化物)がおススメです。

腎不全の猫の場合

「タンパク質を控えましょう」と言われる猫の腎不全ですが、
猫の糖新生の特性を考えるとむやみに減らすのは逆効果です。

なぜなら、減らしたってどっちみち糖新生しちゃうんですから。
その時に、タンパク質を控えた食事のせいで、筋肉が使われてしまったら?
筋肉が減ることで体力が落ち、ただでさえ弱りがちな食欲がますます減退し…
という悪循環に陥る可能性だってあります。

腎不全の猫にもやっぱりそれなりのタンパク質は必要なんです。

まとめ~糖新生する猫には多くのタンパク質が必要!

どんな時でも、何を食べても、一定量の糖新生をして
タンパク質を消費してしまうのが猫の体。

余ったエネルギーが脂肪となり、肥満になってしまわないよう、
筋肉を減らしてしまわないよう、
猫にはヒトや犬より多くのタンパク質が必要です。

食事を選ぶとき、タンパク質の量は常に気をつけてあげたいですね。

 

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