猫の腎不全、予防のために療法食はダメ!その理由とは?

猫の腎不全

猫は腎不全になりやすい生き物。
腎不全になってしまうことを心配している飼い主さんも多いですよね。

まだ健康な猫だけど、腎不全の療法食を与えようと思います!
予防になりますよね?

いいえ、それはダメ。

この記事では、健康な猫に腎不全予防のために療法食を与えることの
危険性について、わかりやすく説明しています。

※この記事ではドライフードの療法食について書いています。
ウェットタイプの療法食はケースバイケース、
与えてもよい場合、おすすめの場合もあります。

猫の腎不全療法食、特徴を知ろう

なぜ、腎不全の療法食を健康な猫に与えてはいけないのか?
それを理解するためにも
腎不全用の療法食の特徴をきちんと理解しましょう。

腎不全の療法食、特徴は栄養バランスにある

猫の腎不全用療法食の特徴は特異な栄養バランスです。

腎臓に良い薬とか成分とかが入っていて
腎不全にならないようになるとか
進行を止めてくれる、とかそういうものはありません。

では、普通のキャットフードとどう違うのか?
下の3つの円グラフを見てください。

 

 

 

グラフが小さくて見づらいでしょうか?スミマセン

左から
高タンパク高脂肪ハイカロリーのオリジン、
タンパク質やや控えめのナウフレッシュ、
腎不全療法食のヒルズk/d。

グラフの色で見てもらうとわかりやすいと思うんですが、
緑がタンパク質です。
左と真ん中に比べて療法食のヒルズは少ないですよね。

そしてグラフの赤色が糖質(炭水化物)。
療法食のヒルズが他のふたつに比べて
とても多いのがわかると思います。

普通のキャットフードと比べて
タンパク質が少なく、糖質が多い。
これが腎不全療法食の一番の特徴です。

ここまでのまとめ

・腎不全の療法食、主な特徴は栄養バランス
・腎不全に効く薬が入っているわけではありません
・普通のフードと比べると、タンパク質が少なく糖質が多い

猫の腎不全療法食、予防効果はあるの?

健康な猫に、腎不全予防のために療法食を与える。
果たしてこれは腎不全予防に効果があるのでしょうか?

結論から言います。

猫せんせい
猫せんせい

うむ。あまりないでしょうな。

猫先生に先に言われてしまいましたが、
管理人もみじも同じ意見です。

腎不全療法食の一番の特徴は
タンパク質が少なく、糖質が多いことですが、
タンパク質を減らす一番の理由は
体の中でアンモニアが作られるのを減らすためです。

タンパク質は、どんなものでも
体に吸収されたらもれなくアンモニアを生成してしまいます。

アンモニアは体にとって強い毒、
そのままにしておいたら命にかかわるので
肝臓で無毒な状態に変換します。
これがBUN(尿素窒素)。

BUNになった後は腎臓でろ過されて
オシッコといっしょに排泄されます。

体内で作られるBUNの量は
食べたタンパク質の量に比例するので
タンパク質をたくさん食べればBUNも多く、
ひかえめに食べればBUNの量も減ります。

BUNは、腎不全の診断に利用される指標、
血液中のBUNが基準値より多ければ、
腎不全かも?となりますし、
実際、腎不全が進行すると血液中のBUNは増えていきます。

だったらBUNを減らすために
タンパク質を減らすのは
予防にも効果があるんじゃないかな?

ハイ、確かにそこだけ切り取ってみると
低タンパク質の療法食は予防にも効果があるように思えますよね。

でも、腎臓でろ過しなければならないのはBUNだけではありません。
薬物や合成物、腸内で産生される毒素など
他にもさまざまなものがありますし、
腎臓に負担をかけるのは、ろ過するものが増えることによる負担以外にも
炎症や酸化ストレスなどいくつもの要因があります。

BUNだけを減らしても、
腎臓への負担軽減は限定的なものになると思います。

猫の腎不全療法食、健康な猫に与え続けるとどうなる?

猫の腎不全療法食の特徴は
タンパク質が少なく、糖質が多いこと。

こういう食事を健康な猫が続けるとどうなるでしょうか?

上でも書きましたが、タンパク質を減らせばBUNも減ります。
非常に限定的だけど、腎臓のケアにならないこともないかもしれない。

でもね、デメリットのほうが大きいです。とても大きい。

では、どんなデメリットがあるのでしょうか?

タンパク質の微妙な不足で身体機能、免疫やストレス耐性が低下する

タンパク質、と言えば筋肉?
いえいえ、それだけではありません。

タンパク質は筋肉だけではなく、皮膚や被毛、内臓組織や
ホルモン、神経伝達物質など、体のあらゆるものに必要です。

療法食のタンパク質量のほとんどは
命をつなぐためのギリギリ量です。
あからさまな不足は起きないとは思いますが、
少しづつ、少しづつの不足が起きてしまうリスクは避けられないと思います。

少ないタンパク質のせいで
十分な筋肉を作れなければ、活力や元気を失いがちになります。

やる気や意欲を引き出すドーパミン、
リラックス効果のあるセロトニンなどの
神経伝達物質の働きが鈍れば、
遊びや人とのコミュニケーションに喜びを見出しにくくなったり
ストレスを感じやすくなることもあるでしょう。

皮膚や被毛は、艶やハリがなくなってくるかもしれません。

免疫力も低下しやすくなってしまいます。

健康なはずなのに、まだ若いのに、なんだか年より猫みたい…

十分なタンパク質を得られないとこんなことも起きてくると思います。

多すぎる糖質で肥満や糖尿病、すい炎のリスクも上がる!

猫の腎不全療法食は、タンパク質を減らした分、糖質が多いです。

肉食獣の猫の本来の食事は捉えた獲物を食べること。
捕らえた獲物から得られるエネルギー源のほとんどはタンパク質か脂肪、
糖質(炭水化物)なんてほとんどありません。

そんな猫が、それも健康な猫が
上のグラフにあるような糖質が40%近くある食事を強いられたら
どうなるでしょうか?

猫せんせい
猫せんせい

うむ、太りやすくなりますな。

猫せんせいに先に言われてしまいましたが、その通り!

糖質(炭水化物)は、脂肪よりも猫を太らせてしまいます!

猫が糖質で太りやすい理由とは?

なぜ猫は糖質で太ってしまうのでしょうか?

インスリンは、血液中の糖を筋肉や脂肪に送る役割を持っていますが、
エネルギーとして使われる分は主に筋肉に運ばれ、
余った分は脂肪に運ばれ、そのまま脂肪になってしまいます。

だから、多すぎる糖質は脂肪になることで
肥満につながるんですよ。

インスリンには、脂肪を分解しにくくする、脂肪を蓄積する、
という困った働きもあるので、
インスリン分泌が多ければ、脂肪は分解されにくく溜まりやすくなります。
これじゃますます太っちゃいますよね。

そして、猫はヒトや犬に比べると
同じ量の糖質を食べても、分泌されるインスリンが多くなりやすいんです。

肉食獣として、長く生きてきた歴史がそういう体を作りました。
そのため、猫は多すぎる糖質による肥満リスクがかなり高いんです。

糖尿病やすい炎になる危険性も?

猫は、糖質で太る。
これが管理人もみじの考えです。

上でも書きましたが、猫は血糖値を下げるために
ヒトや犬より多くのインスリンを必要とします。

糖質の多い食事を与え続ければ、
血糖値も上がりやすく、インスリンもたくさん分泌されます。

そういう状態が長く続くと、インスリンが効きにくくなってくるんです。
これを「インスリン抵抗性」って言うんですが
インスリン抵抗性状態が長く続けば、すい臓は疲労がたまり
やがて十分な量のインスリンを分泌できなくなってしまいます。
これが糖尿病の始まり。

インスリンはすい臓で分泌されますが、
糖質の消化酵素であるアミラーゼもすい臓から分泌されます。

糖質の多い食事を続けていれば
インスリンもたくさん、アミラーゼもたくさん
分泌しなければなりません。

猫は肉食獣、本来捕まえた獲物を食べる生活をしていたため
タンパク質や脂肪を分解する消化酵素の活性は高いですが
ほとんど食べる習慣のなかった、
糖質の消化酵素を分泌するのはやや苦手。
ヒトや犬よりアミラーゼの産生が少ないんです。

そんな猫が、糖質の多い食事を長く続けることで
インスリンもたっぷり、アミラーゼもたっぷり必要、となったら
すい臓は疲れてしまう。

これこそが猫のすい炎の始まりではないか。
これが管理人もみじの考えです。

 

ここまでのまとめ

・腎不全の療法食、健康な猫への予防効果はあまりない
・与え続けることのデメリットのほうがとても大きい
・タンパク質が不足気味になることもある
・肥満や糖尿病、すい炎になるリスクが高まる

猫の腎不全療法食、健康な猫に与えちゃダメ!じゃあどうすればいい?

猫の腎不全療法食は、健康な猫に与えても
予防効果はほとんどありません。

腎不全のケアのため、特殊な栄養バランスになっているので
健康な猫に与え続ければ、肥満や糖尿病、すい炎など
病気になってしまう可能性すらあります。

健康な猫に与えるのはダメ!
管理人もみじは、健康な猫に腎不全用の療法食を与えることに
強く反対します。

じゃあどうしたらいいの?
猫が腎不全にならないようにする方法はないの?

いえいえ、そんなことはありません。
完全に防ぐことは難しいですが
日々の食事に気を配ることで
効果はちゃんと見込めますよ。

腎臓は、老廃物を排泄するための臓器。
老廃物とは、体にできたゴミのようなものですが
食事の工夫で、ゴミそのものを減らすことができます。

ゴミが減れば、腎臓の負担も減ります。
ゴミを増やさない工夫をすることで
腎臓はより長持ちして、愛猫の命を支えてくれるでしょう。

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